テレワーク中の光回線が遅い原因と改善策8選｜今すぐ試せる対処法

「Zoom会議の途中で画面が固まった…」 「資料を共有したいのに、読み込みが全然終わらない…」 「相手の声は聞こえるのに、こちらの声が届いていないらしい…」

テレワーク中、こんな経験をしたことはありませんか？光回線を契約しているはずなのに、肝心な場面で通信が不安定になると、本当に焦りますよね。特にビデオ会議中のトラブルは、相手にも迷惑をかけてしまい、「準備ができていない人」という印象を与えかねません。

実は、テレワーク中の回線速度低下には特有の原因があり、適切な対策を取れば多くの場合改善できます。この記事では、テレワークで光回線が遅くなる7つの原因と、今すぐ試せる8つの改善策を詳しく解説します。さらに、それでも改善しない場合の根本的な対策として、回線・プロバイダの見直し方までカバーしています。

この記事を読み終える頃には、なぜあなたの回線が遅いのかがわかり、今日から試せる具体的な対策が明確になっているはずです。快適なテレワーク環境を手に入れて、ストレスなく仕事に集中しましょう。

テレワークで光回線が遅くなる7つの原因

テレワーク中に「光回線なのに遅い」と感じる場合、考えられる原因は主に7つあります。自分の状況がどれに当てはまるかを把握することが、効果的な対策への第一歩です。

原因①：回線の混雑（時間帯による影響）

テレワークが普及した現在、平日の日中でも回線が混雑するようになりました。総務省の「令和5年版情報通信白書」によると、新型コロナウイルス感染症の流行以降、固定ブロードバンドのトラフィック量は約1.9倍に増加しています（参考：総務省「情報通信白書」）。

特に午前9時〜12時、午後13時〜17時のビジネスアワーは、テレワーカーが一斉にビデオ会議を行う時間帯です。さらに夕方以降は、子どものオンライン学習や家族の動画視聴が加わり、回線はさらに混雑します。

原因②：プロバイダ側の設備不足

光回線の速度は、契約しているプロバイダ（ISP）の設備能力に大きく左右されます。テレワーク需要の急増に設備増強が追いついていないプロバイダでは、混雑時間帯に顕著な速度低下が発生します。

同じNTTフレッツ光を使っていても、プロバイダによって実測速度が大きく異なるのはこのためです。特に契約者数に対して設備投資が不十分なプロバイダでは、日中でも10Mbps以下まで落ち込むケースがあります。

原因③：IPv4 PPPoE接続のボトルネック

インターネット接続には「IPv4 PPPoE」と「IPv6 IPoE」という2つの主な方式があります。

従来のIPv4 PPPoE接続では、プロバイダとNTT回線の接続点にある「網終端装置（POI）」を経由する必要があります。この網終端装置が混雑の原因となりやすく、特に利用者が多い時間帯に速度低下を引き起こします。

一方、IPv6 IPoE接続では網終端装置を経由しない仕組みのため、混雑の影響を受けにくく、安定した速度が出やすいとされています。現在の契約がIPv4 PPPoE接続のままの場合、これが速度低下の大きな原因になっている可能性があります。

原因④：マンションの配線方式（VDSL問題）

マンションにお住まいの場合、建物内の配線方式が速度に大きく影響します。

築年数の古いマンションに多いVDSL方式は、理論上の最大速度が100Mbpsに制限されます。実測値は50Mbps程度が上限となることが多く、複数のビデオ会議が重なると厳しい状況になります。

原因⑤：ルーター・LANケーブルの性能不足

自宅のルーターやLANケーブルが古い場合、光回線の性能を十分に発揮できないことがあります。

5年以上前のルーターは、最新の通信規格（Wi-Fi 6等）に対応しておらず、複数端末の同時接続にも弱い傾向があります。また、LANケーブルがCAT5（カテゴリ5）の場合、最大100Mbpsまでしか対応していないため、せっかくの光回線がボトルネックになってしまいます。

原因⑥：家族との帯域共有

テレワーク中に家族もインターネットを使用している場合、帯域（通信容量）を奪い合う状況になります。

特に影響が大きいのは以下の利用です。

• 4K動画のストリーミング視聴（25Mbps以上を消費）
• オンラインゲーム（ダウンロード時に大容量通信）
• 大容量ファイルのアップロード・ダウンロード
• 複数端末での同時利用

自分のビデオ会議中に、家族がNetflixで4K動画を視聴しながら、子どもがゲームのアップデートをダウンロードしている…という状況では、どんな回線でも厳しくなります。

原因⑦：VPN接続による速度低下

会社のネットワークにVPN（Virtual Private Network）で接続している場合、VPN自体が速度低下の原因になることがあります。

VPN接続では、すべての通信が会社のサーバーを経由するため、以下の要因で速度が低下します。

• 会社側のVPNサーバーの処理能力不足
• VPNサーバーへの接続数過多
• 暗号化・復号化の処理負荷
• 会社サーバーとの物理的な距離

特にテレワーク導入初期の企業では、VPNサーバーの増強が追いついておらず、社員が一斉に接続する朝の時間帯に速度が著しく低下するケースが報告されています。

テレワークに必要な回線速度の目安

「遅い」と感じる前に、まずテレワークにどの程度の速度が必要なのかを把握しておきましょう。闇雲に「速くしたい」と思うより、具体的な目標値があった方が対策を立てやすくなります。

用途別の推奨速度一覧

主要なビデオ会議ツールと業務アプリケーションの推奨速度は以下の通りです。

（参考：Zoomサポート「システム要件」）

単純に足し算すると、ビデオ会議をしながら画面共有や資料ダウンロードを行う場合、下り10Mbps以上、上り5Mbps以上あれば最低限の業務は可能です。ただし、これはあくまで最低限の数値であり、安定性を考慮すると下り50Mbps以上、上り20Mbps以上を確保しておくのが理想的です。

上り速度の重要性（テレワーク特有の視点）

テレワークでは、一般的なインターネット利用と比べて「上り速度」の重要性が格段に高くなります。

一般的なインターネット利用（Webサイト閲覧、動画視聴など）は「下り」が中心ですが、テレワークでは以下のような「上り」の通信が頻繁に発生します。

• ビデオ会議で自分の映像・音声を送信する
• 画面共有で自分のPCの映像を送信する
• クラウドストレージへファイルをアップロードする
• メールで添付ファイルを送信する

多くの光回線は「下り最大1Gbps、上り最大100Mbps」のように、上りと下りで速度差があります。回線速度を測定する際は、下り速度だけでなく上り速度も必ず確認しましょう。

現在の速度を正確に測定する方法

回線速度は時間帯や測定環境によって大きく変動します。正確な状況を把握するため、以下の手順で測定することをおすすめします。

1. 有線LAN接続で測定する（Wi-Fiの影響を排除）
2. 他のアプリケーションを終了する
3. 複数の時間帯で測定する（午前・午後・夜間）
4. 複数の測定サイトを使用する

おすすめの測定サイトは以下の通りです。

• fast.com（Netflixが提供、シンプルで使いやすい）
• Speedtest by Ookla（詳細なデータが取得可能）
• みんなのネット回線速度（同じ回線・プロバイダのユーザーと比較可能）

【今すぐできる】テレワーク中の回線速度を改善する8つの方法

ここからは、今日から実践できる具体的な改善策を紹介します。費用をかけずにできるものから順に解説していきますので、上から順番に試してみてください。

対策①：有線LAN接続に切り替える

最も手軽で効果的な対策が、Wi-FiからLAN接続への切り替えです。

Wi-Fi接続は、壁や家具による電波の減衰、他の電子機器との干渉、接続端末数の増加など、様々な要因で速度が低下します。一方、有線LAN接続はこれらの影響を受けないため、安定した通信が可能です。

特にビデオ会議中は、たとえ数秒の通信途絶でも「音声が途切れる」「画面が固まる」といった問題につながります。可能な限り、テレワーク用のPCは有線LANで接続することをおすすめします。

ノートPCでLANポートがない場合は、USB-LANアダプターを使用すれば有線接続が可能です。1,000〜2,000円程度で購入できます。

対策②：ルーターの再起動と設置場所の見直し

ルーターを長期間稼働させ続けると、メモリにデータが蓄積して動作が遅くなることがあります。週に1回程度、電源を抜いて10秒ほど待ってから再起動する習慣をつけましょう。

また、ルーターの設置場所も重要です。理想的な設置条件は以下の通りです。

• 床から1〜2mの高さに設置する
• 部屋の中央付近に置く（可能であれば）
• 電子レンジや水槽の近くを避ける（電波干渉の原因）
• 金属製の家具や壁から離す
• 作業場所との間に障害物が少ない位置に置く

対策③：ビデオ会議ツールの設定を最適化する

ビデオ会議ツール側の設定を調整することで、必要な帯域を抑えることができます。

Zoomの場合の設定例を紹介します。

1. 設定画面を開く
2. 「ビデオ」→「マイビデオ」でHD画質をオフにする
3. 「ビデオ」→「バーチャル背景」をオフにする（CPU負荷軽減）
4. 画面共有時は「最適化」オプションを確認する

Microsoft Teamsの場合も同様の設定が可能です。

1. 設定→「帯域幅」で品質を調整
2. 背景効果をオフにする
3. 「一緒にモード」など負荷の高い機能を避ける

対策④：バックグラウンドアプリを終了する

テレワーク中、知らないうちにバックグラウンドで通信を行っているアプリケーションが速度低下の原因になることがあります。

特に注意が必要なアプリケーションは以下の通りです。

• クラウドストレージの同期（Dropbox、OneDrive、Google Drive）
• ソフトウェアの自動アップデート
• ブラウザのタブ（特に動画サイトやSNS）
• 音楽・動画のストリーミング

会議中は不要なアプリケーションを終了し、クラウドストレージの同期も一時停止することをおすすめします。

対策⑤：家族の利用時間を調整する（QoS設定）

家族と回線を共有している場合、利用時間の調整が効果的です。特に重要な会議がある時間帯は、動画視聴やゲームのダウンロードを控えてもらうよう、事前に伝えておきましょう。

より技術的な解決策として、ルーターの「QoS（Quality of Service）」機能を活用する方法があります。QoSは、特定の端末や通信を優先する機能で、テレワーク用のPCの通信を優先設定することで、他の家族の利用による影響を軽減できます。

QoS設定の手順はルーターによって異なりますが、一般的には以下の流れです。

1. ルーターの管理画面にアクセス（通常は192.168.1.1や192.168.0.1）
2. 「QoS」または「帯域制御」の設定項目を探す
3. テレワーク用PCのIPアドレスまたはMACアドレスを登録
4. 優先度を「高」に設定

対策⑥：LANケーブルをCAT6以上に交換する

使用しているLANケーブルが古い場合、ケーブル自体がボトルネックになっている可能性があります。

LANケーブルのカテゴリと対応速度は以下の通りです。

ケーブルのカテゴリは、ケーブル本体に印字されていることが多いです。確認して、CAT5以下の場合はCAT6への交換を検討しましょう。CAT6ケーブルは数百円〜1,000円程度で購入できます。

対策⑦：VPN接続を最適化する

会社のVPNを使用している場合、以下の対策で速度改善が期待できます。

まず、VPN接続が本当に必要な作業かどうかを確認しましょう。社内システムへのアクセスはVPNが必要でも、ビデオ会議やWebブラウジングはVPNを経由しなくても良いケースがあります。この場合、「スプリットトンネル」という設定で、必要な通信のみVPNを経由させることができます。

ただし、スプリットトンネルの設定変更は会社のセキュリティポリシーに関わるため、必ずIT部門に確認してから実施してください。

VPN自体が遅い場合は、会社側のインフラの問題である可能性が高いです。IT部門に状況を報告し、改善を依頼することも検討しましょう。

対策⑧：IPv6/IPoE接続に切り替える【効果大】

ここまでの対策を試しても改善しない場合、IPv6/IPoE接続（v6プラス、transixなど）への切り替えを強くおすすめします。

IPv6/IPoE接続は、混雑しやすい網終端装置を経由しないため、時間帯を問わず安定した速度が出やすいのが特徴です。多くのプロバイダで追加料金なしで利用できます。

まず、現在の接続方式を確認しましょう。以下のサイトにアクセスすることで、IPv6で接続されているかどうかを確認できます。

• test-ipv6.com
• 各プロバイダの会員ページ

IPv6に対応していない場合の切り替え手順は以下の通りです。

1. 契約中のプロバイダがIPv6/IPoE接続に対応しているか確認
2. プロバイダの会員ページまたは電話で申し込み
3. IPv6対応ルーターを用意（レンタルまたは購入）
4. 開通後、自動的にIPv6接続に切り替わる（設定不要の場合が多い）

根本的に改善したい場合の対策

ここまでの対策を試しても十分な改善が見られない場合、より根本的な対策を検討する段階です。

ルーターを最新機種に買い替える

5年以上前のルーターを使用している場合は、買い替えによって大きな改善が期待できます。

最新のルーターは以下のようなメリットがあります。

• Wi-Fi 6（802.11ax）対応で高速・安定通信
• 複数端末の同時接続に強い（OFDMA、MU-MIMO技術）
• IPv6/IPoE接続に標準対応
• ビームフォーミング機能で特定端末への電波を強化
• 処理能力の向上による安定性の改善

テレワーク向けのルーター選びのポイントは以下の通りです。

NEC「Aterm」シリーズ、バッファロー「AirStation」シリーズ、TP-Link「Archer」シリーズなどが定評があります。各メーカーの公式サイトで、契約中のプロバイダとの互換性を確認してから購入しましょう。

回線・プロバイダの見直しを検討する

IPv6/IPoE接続にしても改善しない場合、あるいはプロバイダがIPv6に対応していない場合は、回線やプロバイダ自体の見直しを検討する時期です。

乗り換えを検討すべきサインは以下の通りです。

• IPv6/IPoE接続にしても日中の速度が50Mbps以下
• 有線接続でも速度が安定しない
• 同じプロバイダのユーザーから同様の不満が多く報告されている
• 契約から5年以上経過しており、料金プランが古い

乗り換え先を選ぶ際のポイントは以下の通りです。

• IPv6/IPoE接続に標準対応していること
• 回線とプロバイダ一体型でサポート窓口が明確
• 夜間・日中の実測速度に関する口コミが良好
• スマホとのセット割引があればさらにお得

テレワーク向けおすすめ光回線の比較

主要な光回線サービスの比較表です。それぞれの特徴を把握した上で、ご自身の状況に合ったサービスを選びましょう。

※料金は代表的なプランの例です。キャンペーンや契約条件により変動します。

マンションで速度が出ない場合の代替手段

マンションでVDSL方式のため根本的な速度改善が難しい場合は、以下の代替手段を検討しましょう。

戸建てプランを個別に引く

マンションでも、管理会社や大家の許可が得られれば、戸建てプランを個別に引き込める場合があります。電柱から直接自室に光ファイバーを引き込むため、他の住人の影響を受けず、最大1〜10Gbpsの速度が期待できます。

ただし、以下の点に注意が必要です。

• 管理会社・大家の許可が必要
• 工事が必要（穴あけ等が発生する場合あり）
• 退去時の原状回復義務
• 月額料金はマンションタイプより高くなる

まずは管理会社に「光回線の戸建てプランを個別に引きたい」と相談してみることをおすすめします。

5Gホームルーターの活用

工事不要で導入できる5G対応ホームルーター（ドコモhome 5G、WiMAX +5G、ソフトバンクエアーなど）も選択肢の一つです。

5Gホームルーターのメリットは以下の通りです。

• 工事不要、コンセントに挿すだけで使える
• 最新機種は下り最大4.2Gbps（理論値）
• 引っ越しの際も手続きが簡単
• VDSL回線より実測で速いケースもある

ただし、以下のデメリットも理解しておく必要があります。

• 5Gエリア外では4G接続となり、速度が落ちる
• 電波状況に左右される（窓際に設置が推奨）
• 光回線と比較すると上り速度が遅い傾向
• 完全無制限ではないサービスもある

テレワークでの利用を考えると、上り速度の遅さは画面共有や大容量ファイルのアップロードに影響する可能性があります。導入前に、5Gエリアの確認と、テスト利用ができるサービスがないか調べておくことをおすすめします。

モバイルWi-Fiのサブ回線としての利用

固定回線の改善が難しい場合、モバイルWi-Fiをサブ回線として用意しておく方法もあります。

重要な会議の前に固定回線の調子が悪いとわかった場合、モバイルWi-Fiに切り替えることで、最悪の事態を避けることができます。また、固定回線が完全に使えなくなった場合のバックアップとしても機能します。

モバイルWi-Fiは月額3,000〜4,000円程度で利用でき、日割りレンタルできるサービスもあります。テレワークが多い方は、保険として検討する価値があるでしょう。

よくある質問（FAQ）

まとめ

テレワークで光回線が遅いと感じる場合、主な原因は以下の7つです。

1. 回線の混雑（テレワーク普及による日中の混雑）
2. プロバイダ側の設備不足
3. IPv4 PPPoE接続のボトルネック
4. マンションの配線方式（VDSL問題）
5. ルーター・LANケーブルの性能不足
6. 家族との帯域共有
7. VPN接続による速度低下

まずは費用をかけずにできる対策（有線LAN接続、ルーター再起動、ビデオ会議の設定最適化など）から試してみてください。特にIPv6/IPoE接続への切り替えは効果が大きく、多くのプロバイダで無料で利用できるため、まだの方はぜひ検討をおすすめします。

それでも改善しない場合は、ルーターの買い替えや回線・プロバイダの見直しが現実的な解決策となります。テレワークは今後も続く働き方であり、快適な通信環境への投資は長期的に見てリターンが大きいといえます。

状況別の推奨アクション:

快適なテレワーク環境を整えて、ストレスなく仕事に集中できる毎日を手に入れましょう。