メカニカルキーボードがうるさい!職場で使える静音化対策5選

オフィスで仕事をしていると、隣の席から響くキーボードの「カタカタ」「カチカチ」という音が気になることがあります。そして、その音の発生源が自分だと気づいたとき、複雑な気持ちになるものです。
メカニカルキーボードは打鍵感が心地よく、長時間のタイピングでも疲れにくいため、多くのエンジニアやライターに愛用されています。しかし、その構造ゆえに打鍵音が大きくなりやすく、職場環境では周囲への配慮が必要になります。
「せっかく気に入って使っているキーボードを手放したくない」「でも同僚の視線が気になる」。そんなジレンマを抱えているあなたに向けて、この記事では以下の内容をお伝えします。
- メカニカルキーボードがうるさい理由(構造的な原因)
- 職場で許容される音量の目安
- 今のキーボードを静音化する具体的な方法5選
- 買い替えを検討する場合の選び方
- よくある誤解と落とし穴
最後まで読めば、あなたの状況に合った対策が明確になります。
メカニカルキーボードはなぜうるさいのか?構造から理解する
対策を考える前に、まずメカニカルキーボードがなぜ大きな音を出すのか、その仕組みを理解しておきましょう。原因を正しく把握することで、効果的な対策を選べるようになります。
メンブレンとの構造の違い
一般的なオフィスで使われるキーボードの多くはメンブレン方式です。これはゴム製のドーム(ラバードーム)がスイッチの役割を果たし、キーを押すとゴムがつぶれて接点が触れる仕組みになっています。
一方、メカニカルキーボードは1つ1つのキーに独立した機械式スイッチ(メカニカルスイッチ)が搭載されています。スイッチ内部にはバネと金属パーツがあり、これらが動くことで「クリック感」や「カチッ」という音が生まれます。
メンブレン方式:ゴムの反発力でキーが戻る。音は比較的静か。
メカニカル方式:金属バネの力でキーが戻る。クリック感があり、音も大きくなりやすい。
打鍵音の正体は3種類ある
メカニカルキーボードの「うるささ」は、実は単一の音ではありません。分解すると3つの音源があります。
| 音の種類 | 発生タイミング | 原因 |
|---|---|---|
| クリック音 | キーを押し込んだとき | スイッチ内部の機構(特にクリッキー軸) |
| 底打ち音 | キーが底まで到達したとき | キーキャップがスイッチハウジングに衝突 |
| 戻り音 | キーが戻るとき | バネの振動、キーキャップの反発 |
[concept-box1] 多くの人が「うるさい」と感じるのは底打ち音であることが多いです。これはキーを強く叩く癖がある人ほど顕著になります。静音化の第一歩は、この底打ち音を抑えることにあります。 [/concept-box1]
軸の種類と音の大きさの関係
メカニカルスイッチには様々な種類があり、「軸」と呼ばれる色で分類されることが一般的です。代表的な軸の音の特徴を比較します。
| 軸の種類 | 打鍵感 | 音の大きさ | 職場での適性 |
|---|---|---|---|
| 青軸(クリッキー) | カチッとした明確なクリック感 | 大きい(50dB以上) | × 避けるべき |
| 茶軸(タクタイル) | 軽いクリック感 | やや大きい | △ 対策が必要 |
| 赤軸(リニア) | スムーズ、クリック感なし | 中程度 | ○ 静音化しやすい |
| ピンク軸(静音リニア) | スムーズ、静音設計 | 小さい | ◎ 職場向き |
[jin_icon_info color=”#e9546b” size=”18px”] 参考:Cherry社公式サイト「MX Switches」(https://www.cherrymx.de/en/cherry-mx/mx-original/mx-silent-red.html)
職場で許容される音量の目安とは?
「うるさい」という感覚は主観的なものですが、客観的な指標として音量(デシベル:dB)で考えることができます。
オフィス環境の標準騒音レベル
厚生労働省が定める「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、VDT作業(ディスプレイを使う作業)を行う室内の騒音はおおむね50dB以下が望ましいとされています。
[jin_icon_info color=”#e9546b” size=”18px”] 出典:厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei02.html)
一般的なオフィスの環境音は40~50dB程度です。この中でキーボードの打鍵音が目立つかどうかが、周囲に迷惑をかけるかどうかの分かれ目になります。
主要キーボードタイプの打鍵音比較
キーボードの種類によって、打鍵音は大きく異なります。
| キーボードタイプ | 打鍵音の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| ノートパソコン内蔵 | 35~40dB | パンタグラフ方式、最も静か |
| メンブレンキーボード | 40~45dB | 一般的なオフィス用 |
| メカニカル(静音軸) | 40~50dB | 対策済みなら許容範囲 |
| メカニカル(赤軸) | 50~55dB | 底打ち音が目立つ |
| メカニカル(青軸) | 55~65dB | 職場には不向き |
「うるさい」と感じられる境界線
環境音が45dB程度のオフィスの場合、キーボードの打鍵音が50dBを超えると周囲に認識されやすくなります。55dBを超えると、多くの人が「うるさい」と感じる可能性が高まります。
[concept-box2] 青軸をオフィスで使用することは、騒音の観点から避けるのが無難です。茶軸も対策なしでは厳しいケースがあります。赤軸やピンク軸であっても、底打ち音対策は行った方が良いでしょう。 [/concept-box2]
今のキーボードを静音化する5つの方法
「せっかく買ったキーボードを手放したくない」という方のために、今使っているメカニカルキーボードを静音化する具体的な方法を紹介します。
方法1|Oリング(静音化リング)を装着する
最も手軽で効果的な静音化方法です。Oリングはキーキャップの裏側に取り付ける小さなゴム製のリングで、キーが底打ちする際の衝撃を吸収します。
- 底打ち音を約30~50%軽減
- キーストロークが0.5~1mm程度浅くなる
- 費用は500~1,500円程度(100個入り)
取り付け手順
- キーキャップを専用工具(キープラー)で外す
- キーキャップの裏側、軸と接する部分にOリングをはめる
- キーキャップを元に戻す
[concept-box2] Oリングを装着するとキーストロークが浅くなるため、深く打ち込む打鍵感が好みの方には違和感を感じる場合があります。まずは1列分だけ試して、感触を確かめることをおすすめします。 [/concept-box2]
方法2|スイッチをルブ(潤滑)する
ルブとはスイッチ内部に潤滑剤を塗布することで、パーツ同士の摩擦音やバネの振動音を抑える方法です。自作キーボード界隈では一般的な静音化テクニックで、効果は高いですが手間がかかります。
効果:スイッチ音が滑らかになり、高音域のノイズが減少する
注意点:
- スイッチを分解する必要がある(ホットスワップ対応キーボードが望ましい)
- 作業に数時間かかる
- 適切な潤滑剤(Krytox GPL 205g0など)を使用する必要がある
方法3|デスクマットを敷く
キーボードの下にデスクマット(マウスパッド兼用の大型マット)を敷くことで、底打ち時の振動がデスクに伝わるのを防ぎます。見落とされがちですが、効果は確実にあります。
デスクマットは打鍵時の振動を吸収するだけでなく、キーボード自体が安定してずれにくくなるメリットもあります。素材は布製や合皮製など様々ですが、厚みが3mm以上あるものが振動吸収に効果的です。
方法4|キーボード内部にフォームを入れる
キーボードのケースを開け、内部に吸音フォーム(スポンジ)を敷き詰める方法です。キーボード内部の空洞で反響していた音を吸収し、音質を改善します。
- 反響音、残響音を大幅に軽減
- 打鍵音が「コトコト」と落ち着いた音に変化
- 市販の静音フォームや隙間テープでも代用可能
- ケースを開ける必要があるため、保証が切れる可能性あり
方法5|タイピングの癖を見直す
意外かもしれませんが、タイピングの仕方を変えるだけで音は大きく変わります。
[concept-box1] キーを「叩く」のではなく「押す」感覚でタイピングすることを意識してみてください。底打ちする力を弱めるだけで、底打ち音は確実に小さくなります。 [/concept-box1]
特にメカニカルキーボードは、キーを底まで押し切らなくても入力が認識されます。作動点(アクチュエーションポイント)まで押せば文字は入力されるため、必要以上に強く打ち込む必要はありません。
職場向け静音キーボードの選び方
静音化対策を施しても満足できない場合や、そもそも青軸を使っていて根本的な解決が難しい場合は、買い替えを検討することになります。ここでは職場で使いやすい静音キーボードの選び方を解説します。
静音軸(赤軸・ピンク軸など)の特徴
職場使用を前提とするなら、リニア軸と呼ばれるタイプを選ぶのが基本です。リニア軸はスイッチ内部にクリック機構がなく、押し始めから押し終わりまでスムーズに動きます。
| 静音軸の種類 | 特徴 | 代表的な製品 |
|---|---|---|
| Cherry MX Silent Red | 静音リニアの定番 | 多数のメーカーが採用 |
| Cherry MX Silent Black | 押下圧が重めの静音軸 | 誤入力が少ない |
| Gateron Silent Red | Cherry互換の静音軸 | コストパフォーマンスが高い |
静電容量無接点方式という選択肢
メカニカルスイッチとは異なる方式として、静電容量無接点方式があります。代表的な製品としてREALFORCE(リアルフォース)やHHKB(Happy Hacking Keyboard)が挙げられます。
- 物理的な接点がないため、摩耗が少なく長寿命
- 「スコスコ」という独特の静かな打鍵音
- 高級機が多く、価格帯は2~3万円以上
- タイピング時の疲労が少ないと評価されることが多い
[jin_icon_info color=”#e9546b” size=”18px”] 参考:東プレ株式会社「REALFORCE」(https://www.realforce.co.jp/)
[jin_icon_info color=”#e9546b” size=”18px”] 参考:PFU「HHKB」(https://happyhackingkb.com/jp/)
予算別おすすめの選び方
5,000円以下: 静音メンブレンやパンタグラフ式を検討。メカニカルの打鍵感にこだわらないなら、ノートPC用外付けキーボードも選択肢。
5,000~15,000円: 静音軸(Cherry MX Silent Red、Gateron Silent)搭載のメカニカルキーボードが選べる価格帯。LogicoolやFILCOなどから選択可能。
15,000円以上: REALFORCE、HHKBなど静電容量無接点方式や、高品質な静音メカニカルを検討。長期使用を考えると費用対効果は高い。
よくある誤解と意外な落とし穴
メカニカルキーボードの静音化について、よくある誤解を解消しておきます。
「赤軸=静か」は本当か?
赤軸(リニア軸)は青軸(クリッキー軸)と比較すれば確かに静かです。しかし、赤軸であっても底打ち音は発生します。
赤軸はスイッチ内部のクリック機構がないだけで、キーを底まで押し込んだときの音は抑えられていません。そのため、Oリングやデスクマットなどの底打ち音対策は赤軸でも必要になります。
「赤軸を買ったのにうるさいと言われた」というケースは、この点を見落としていることが多いです。
静音キーボード=打ち心地が悪い?
「静かになる代わりに打鍵感が犠牲になるのでは」と心配する方もいますが、必ずしもそうではありません。
静音軸やREALFORCEは、音を抑えながらも快適な打鍵感を維持する設計がなされています。特にREALFORCEやHHKBは「むしろ打ち心地が良い」と評価されることも多く、一概に静音=打鍵感の低下とは言えません。
ただし、青軸特有の「カチッ」というクリック感が好みの方は、静音軸に変えると物足りなさを感じる可能性があります。打鍵感の好みは人それぞれなので、可能であれば実機を試してから購入することをおすすめします。
テレワークなら気にしなくていい?
在宅勤務であれば周囲に同僚はいませんが、意外な落とし穴があります。
[concept-box2] Web会議中、マイクがキーボードの打鍵音を拾ってしまい、相手に聞こえることがあります。特にノートPCの内蔵マイクを使っている場合、キーボードとマイクの距離が近いため顕著になります。 [/concept-box2]
また、家族と同居している場合は、家族への配慮も必要です。特に夜間の作業では、静かな環境の中でメカニカルキーボードの音が響きやすくなります。
よくある質問(FAQ)
個室や防音環境が整っている場合を除き、オープンオフィスでの青軸使用は避けた方が無難です。青軸はクリック機構によって意図的に音を出す設計になっているため、静音化にも限界があります。職場では赤軸やピンク軸への乗り換えを検討してください。
キーストロークが0.5~1mm程度浅くなり、底打ち時の「カチン」という硬い感触がなくなります。柔らかい打鍵感になるため、好みが分かれるところです。まずは一部のキーだけで試してみることをおすすめします。
厳密にはメカニカル方式ではありませんが、静電容量無接点方式のREALFORCEやHHKBが最も静かな部類に入ります。メカニカル方式に限定するなら、Cherry MX Silent Redなどの静音軸を搭載し、内部に吸音材が入っている製品を選ぶと良いでしょう。
費用対効果と手軽さを考慮すると、以下の順番がおすすめです。
- デスクマットを敷く(最も手軽)
- タイピングの癖を見直す(無料)
- Oリングを装着する(1,000円程度で効果大)
- キーボードの買い替えを検討(根本解決)
まとめ
メカニカルキーボードの打鍵音問題は、構造を理解し、適切な対策を施すことで解決できます。
- 打鍵音の主な原因は「底打ち音」であり、クリック音とは別の対策が必要
- 職場では50dB以下を目安に静音化を目指す
- Oリングやデスクマットで今のキーボードを活かす対策が可能
- 根本解決には静音軸や静電容量無接点方式への乗り換えが効果的
- テレワークでもWeb会議での音漏れに注意が必要
まずは手軽に試せるデスクマットとOリングから始めてみてください。それでも満足できない場合は、静音軸やREALFORCE、HHKBなど静音性に優れた製品への買い替えを検討すると良いでしょう。
快適な打鍵感と静かなオフィス環境は、正しい知識と対策があれば両立できます。

























