「さっきまで普通に使えていたのに、急にゲーミングPCの電源がつかなくなった…」
電源ボタンを押しても無反応、ファンすら回らない。または、一瞬電源が入ってもすぐに落ちてしまう——。このような状況でパニックになっていませんか。
ゲーミングPCの電源トラブルは、原因によって「自分で簡単に直せるケース」と「修理が必要なケース」に分かれます。電源ケーブルの抜けや静電気など、数分で解決できる原因も意外と多いのです。
一方で、焦って不用意に対処すると、状況を悪化させてしまう可能性もあります。
この記事では、電源がつかない症状のパターン別に考えられる原因を整理し、順番に試すべき対処法を詳しく解説します。落ち着いて、一つずつ確認していきましょう。
まず確認!電源がつかない時の症状チェック
対処法を試す前に、あなたのPCがどのような状態なのかを確認しましょう。症状によって原因と対処法が大きく異なります。
症状パターン①:電源ボタンを押しても完全に無反応
電源ボタンを押しても、まったく反応がない状態です。ファンも回らず、LEDも点灯しません。
考えられる主な原因
- 電源ケーブルの接続不良・抜け
- 電源タップの故障・スイッチOFF
- 電源ユニット(PSU)の故障
- 電源ユニットのスイッチがOFF
- マザーボードの故障
- 静電気の帯電
症状パターン②:電源は入るがすぐ落ちる
電源ボタンを押すと一瞬ファンが回ったり、LEDが点灯したりするが、すぐに電源が切れてしまう状態です。
考えられる主な原因
- 電源ユニットの容量不足・故障
- CPUの取り付け不良・故障
- メモリの接触不良・故障
- マザーボードの故障
- ショート(短絡)の発生
- 過熱による保護機能の作動
症状パターン③:ファンは回るが画面が映らない
電源は入り、ファンも回転しているが、モニターに何も表示されない状態です。
考えられる主な原因
- グラフィックボードの接触不良・故障
- メモリの接触不良・故障
- モニターとの接続問題(ケーブル、入力切替)
- BIOS設定の問題
- CPUの内蔵グラフィック関連の問題
症状パターン④:ビープ音が鳴る
電源投入時にビープ音(ピッピッという電子音)が鳴り、起動しない状態です。
ビープ音は重要なヒント
ビープ音のパターン(回数、長短)は、マザーボードからのエラーコードです。マザーボードのメーカーや搭載されているBIOSによって意味が異なります。取扱説明書やメーカーサイトで確認することで、故障箇所を特定できます。
| ビープ音パターン(例:AMI BIOS) | 考えられる原因 |
| 短音1回 | 正常起動 |
| 短音3回 | メモリエラー |
| 長音1回+短音3回 | グラフィックボードエラー |
| 連続ビープ | メモリ未検出・電源問題 |
ゲーミングPC電源がつかない10の原因と対処法
ここからは、考えられる原因と対処法を、簡単に確認できるものから順番に紹介します。上から順に試していくことで、効率よく原因を特定できます。
①電源ケーブルの接続不良
最も基本的で、見落としやすい原因です。
確認ポイント
- 電源ケーブルがコンセントにしっかり刺さっているか
- 電源ケーブルがPC本体にしっかり刺さっているか
- ケーブルに損傷(断線、折れ曲がり)がないか
対処法
- 電源ケーブルを一度抜く
- 両端(コンセント側、PC側)をしっかり差し直す
- 別の電源ケーブルがあれば交換して試す
意外と多い「ケーブルの緩み」
PCを動かした時や、掃除の際にケーブルが緩んでいることがあります。特に、電源ケーブルのPC側接続部は見落としやすいので、しっかり確認してください。
②電源タップ・コンセントの問題
電源タップやコンセント自体に問題がある場合もあります。
対処法
- 電源タップのスイッチがONになっているか確認
- 別のコンセント(壁のコンセント直接など)に接続して試す
- 他の電化製品をそのコンセントに接続して通電確認
- ブレーカーが落ちていないか確認
雷サージによる故障
落雷時にサージ(瞬間的な過電圧)が発生し、電源タップや電源ユニットが故障することがあります。雷が多い時期にPCを使用する際は、サージプロテクター付きの電源タップの使用を推奨します。
③電源ユニットのスイッチがOFF
電源ユニット(PSU)の背面には、主電源スイッチがあります。これがOFFになっていると電源は入りません。
対処法
- PC背面の電源ユニット付近を確認
- 「○」と「|」または「OFF」と「ON」の表示があるスイッチを探す
- 「|」または「ON」側になっているか確認
- OFFになっていれば、ONに切り替える
スイッチの意味
- 「○」=OFF(電流が流れない)
- 「|」=ON(電流が流れる)
PCを移動した際や、ケーブルを抜き差しした際に、うっかりOFFにしてしまうことがあります。
④静電気の帯電
PC内部に静電気が溜まると、起動しなくなることがあります。簡単に試せて効果が高い対処法です。
対処法(放電作業)
- PCの電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜く
- 電源ユニットのスイッチをOFFにする
- 電源ボタンを5〜10回押す(放電のため)
- そのまま5〜10分放置する
- 電源ケーブルを接続し、電源ユニットのスイッチをONにする
- 電源ボタンを押して起動を試みる
なぜ効果があるのか
PC内部のコンデンサに不要な電気が溜まると、正常な起動を妨げることがあります。放電作業によってこれをリセットし、正常な状態に戻すことができます。
⑤電源ユニットの故障
上記の対処法で解決しない場合、電源ユニット(PSU)自体が故障している可能性があります。
電源ユニット故障のサイン
- まったく通電しない
- 焦げた匂いがする
- 異音がする(コイル鳴き、カチカチ音など)
- 電源投入時に火花が見えた
電源ユニットの動作確認方法(ペーパークリップテスト)
- 電源ケーブルを抜き、PC内のすべてのコネクタを外す
- 24ピン電源コネクタを用意
- ペーパークリップを伸ばし、緑色のケーブル(PS_ON)と黒色のケーブル(GND)の穴に差し込む
- 電源ケーブルを接続し、電源スイッチをON
- ファンが回れば電源ユニットは動作している
注意:上級者向けの作業です
ペーパークリップテストは感電のリスクがあります。不安な場合は、別の正常な電源ユニットがあればそれと交換して試すか、修理業者に依頼してください。
⑥マザーボードの故障
電源ユニットが正常でも電源が入らない場合、マザーボードの故障が考えられます。
マザーボード故障のサイン
- 電源ユニットは正常だが通電しない
- コンデンサの膨張・液漏れが見られる
- 焦げ跡がある
- LEDがまったく点灯しない
目視確認のポイント
PCケースを開けて、マザーボードを目視確認してください。コンデンサ(円筒形の部品)の上部が膨らんでいたり、茶色い液体が漏れていたりする場合は、マザーボードの故障が確定的です。
マザーボードの故障は、基本的に交換が必要です。BTOやメーカー製PCの場合は、メーカー修理に出すことをおすすめします。
⑦メモリの接触不良・故障
メモリがしっかり刺さっていなかったり、故障していたりすると、電源が入らない(またはすぐ落ちる)ことがあります。
対処法
- PCの電源を切り、電源ケーブルを抜く
- PCケースを開ける
- メモリを取り外す(両端のロックを外して上に引き抜く)
- メモリの端子部分をエアダスターまたは柔らかい布で清掃
- メモリを再度しっかりと差し込む(カチッと音がするまで)
- 電源を入れて起動を確認
メモリが複数枚ある場合
メモリを1枚ずつ刺して起動を試みることで、故障しているメモリを特定できます。1枚で起動すれば、もう1枚のメモリが故障している可能性があります。
⑧グラフィックボードの接触不良・故障
ゲーミングPCでは、グラフィックボード(GPU)の問題も多く見られます。
対処法
- PCの電源を切り、電源ケーブルを抜く
- PCケースを開ける
- グラフィックボードの補助電源ケーブルを確認(しっかり刺さっているか)
- グラフィックボードをスロットから取り外す
- 端子部分を清掃し、スロットにしっかり差し直す
- 電源を入れて起動を確認
内蔵グラフィックで起動を試す
CPUに内蔵グラフィック(Intel UHD Graphics、AMD Radeon Graphicsなど)がある場合、グラフィックボードを外してマザーボードの映像出力端子にモニターを接続することで、グラフィックボードが原因かどうかを切り分けられます。
⑨CPUの問題
CPUの取り付け不良や故障は稀ですが、可能性としてはあります。
CPUが原因の可能性があるケース
- 最近CPUを交換した、または取り付け直した
- CPUクーラーが正しく取り付けられていない
- サーマルペーストが劣化している
- CPUピンの曲がり(AMD CPUの場合)
CPUの取り外しは慎重に
CPUの取り外し・取り付けは、ピン折れなどのリスクがあります。最近触っていない場合は、CPUが原因である可能性は低いため、他の原因を先に疑ってください。
⑩CMOS電池の消耗
マザーボードに搭載されているCMOS電池(ボタン電池CR2032など)が消耗すると、BIOS設定がリセットされ、起動に問題が生じることがあります。
CMOS電池切れのサイン
- 日付・時刻が毎回リセットされる
- BIOS設定が保存されない
- 購入から3〜5年以上経過している
対処法
- PCの電源を切り、電源ケーブルを抜く
- PCケースを開け、マザーボード上のボタン電池を探す
- 電池を取り外す(ロックを外してスライド)
- 新しいCR2032電池と交換
- 電源を入れて起動を確認
原因特定のためのフローチャート
どこから確認すべきか迷った場合は、以下のフローを参考にしてください。
原因特定フロー
【症状】電源ボタンを押しても完全に無反応 ↓ 【STEP 1】電源ケーブル・コンセント・タップを確認 ↓ 問題なし 【STEP 2】電源ユニットのスイッチを確認(ONになっているか) ↓ 問題なし 【STEP 3】放電作業を実施 ↓ 改善しない 【STEP 4】電源ユニットの動作確認 ↓ 動作している 【STEP 5】マザーボードの目視確認 ↓ 異常なし 【STEP 6】メモリの抜き差し ↓ 改善しない 【STEP 7】最小構成で起動テスト ↓ 改善しない → 修理・パーツ交換を検討
自分で対処できるケース・修理が必要なケース
自分で対処可能な症状
以下のケースは、自分で対処できる可能性が高いです。
| 症状 | 原因 | 対処法 |
| 完全に無反応 | ケーブル・タップ・スイッチの問題 | 接続確認、スイッチ確認 |
| 一瞬つくが落ちる | 静電気、メモリ接触不良 | 放電、メモリ抜き差し |
| ファンは回るが画面が映らない | グラボ・メモリの接触不良 | 抜き差し、清掃 |
| ビープ音が鳴る | メモリ・グラボのエラー | 抜き差し、1枚ずつ試す |
修理・交換が必要な症状
以下のケースは、パーツ交換または専門業者への修理依頼が必要です。
修理・交換が必要なケース
- 電源ユニットが故障している(テストで確認済み)
- マザーボードのコンデンサが膨張・液漏れしている
- 焦げた匂いがする、焦げ跡がある
- 上記の対処法をすべて試しても改善しない
- 落雷・水濡れなど物理的なダメージがある
保証期間の確認方法
保証期間内なら無償修理の可能性
ゲーミングPCの多くは、購入から1〜3年の保証期間があります。保証期間内であれば、無償で修理・交換してもらえる可能性があります。購入時のレシート、保証書、注文履歴を確認してください。
BTOメーカー(ドスパラ、マウスコンピューター、パソコン工房など)の場合は、各社のサポートサイトから修理依頼が可能です。
自作PCとBTO・メーカー製PCで対応が異なる点
| 項目 | 自作PC | BTO・メーカー製PC |
| 分解・パーツ交換 | 自由に可能 | 保証対象外になる可能性あり |
| 原因の切り分け | 自分で各パーツをテスト | メーカーサポートに相談推奨 |
| パーツ交換 | 自分で部品を購入・交換 | メーカー修理または依頼 |
| 保証 | 各パーツの保証を確認 | PC全体の保証を確認 |
BTOやメーカー製PCを分解する際の注意
保証期間内のBTOやメーカー製PCを分解すると、保証が無効になる場合があります。分解シールが貼られている場合は特に注意してください。保証期間内であれば、まずメーカーサポートに連絡することをおすすめします。
電源トラブルを予防する5つの習慣
今後、電源トラブルを防ぐために、以下の習慣を心がけましょう。
電源トラブル予防の5つの習慣
- 高品質な電源ユニットを使用する(80PLUS認証品を推奨)
- サージプロテクター付きの電源タップを使用する
- 定期的にPC内部のホコリを清掃する(3〜6ヶ月に1回)
- PCを適切な温度環境で使用する(過度な高温・低温を避ける)
- 電源ケーブルを無理に曲げたり、踏んだりしない
電源ユニットの寿命
電源ユニットの一般的な寿命は3〜5年程度とされています。高負荷な使用が多い場合は、劣化が早まる可能性があります。予防的に5年程度での交換を検討すると、突然の故障を防げます。
よくある質問(FAQ)
必ずしも故障とは限りません。静電気の帯電、電源ケーブルの緩み、電源タップの問題など、簡単に解決できる原因も多いです。まずは本記事の対処法を上から順番に試してみてください。特に放電作業は効果が高いのでおすすめです。
主な原因としては、電源ユニットの容量不足・故障、CPU・メモリの接触不良、過熱による保護機能の作動などが考えられます。まずはメモリの抜き差しを試し、改善しなければ電源ユニットやCPUの確認に進んでください。
いいえ、すぐに使用を中止してください。焦げた匂いは、電源ユニットやマザーボード、その他のパーツが損傷している可能性を示しています。使い続けると火災のリスクがあります。電源ケーブルを抜き、専門業者に点検を依頼してください。
はい、意外と多くのケースで効果があります。PC内部のコンデンサに不要な電気が溜まると、起動を妨げることがあります。放電作業はリスクがなく、数分でできるので、必ず試すことをおすすめします。
自作PC経験者であれば可能です。ただし、電源ユニットは高電圧を扱う部品なので、作業は必ず電源ケーブルを抜いた状態で行ってください。また、BTOやメーカー製PCの場合は、保証対象外になる可能性があるので注意が必要です。
原因となるパーツによって大きく異なります。電源ユニット交換であれば1〜3万円程度、マザーボード交換であれば3〜7万円程度(部品代+工賃)が目安です。まずは見積もりを取ることをおすすめします。保証期間内であれば、無償または低額で対応してもらえる場合もあります。
まとめ:順番に確認して原因を特定しよう
ゲーミングPCの電源がつかない場合の原因と対処法をまとめます。
| チェック順 | 確認項目 | 難易度 |
| 1 | 電源ケーブル・タップ・コンセントの確認 | ★☆☆ |
| 2 | 電源ユニットのスイッチ確認 | ★☆☆ |
| 3 | 放電作業 | ★☆☆ |
| 4 | メモリの抜き差し | ★★☆ |
| 5 | グラフィックボードの抜き差し | ★★☆ |
| 6 | 電源ユニットの動作確認 | ★★★ |
| 7 | マザーボードの目視確認 | ★★☆ |
| 8 | CMOS電池の交換 | ★★☆ |
まずは簡単なものから
いきなりPCを分解する必要はありません。電源ケーブルの確認、スイッチの確認、放電作業の3つは数分でできて効果も高いです。これだけで解決するケースも多いので、まずはここから始めてください。
それでも解決しない場合は、メモリやグラフィックボードの抜き差しを試し、最終的には電源ユニットやマザーボードの問題を疑います。
パーツの故障が確定した場合や、自分での対処が難しい場合は、保証期間を確認した上でメーカーサポートや修理業者に相談しましょう。





















