「WiMAXを契約したのに、地下鉄に乗ると全然繋がらない…」
通勤や通学で地下鉄を使う人にとって、移動時間は貴重なインターネット利用タイムです。ニュースをチェックしたり、動画を見たり、仕事のメールを確認したり。しかしWiMAXを持っていても、地下鉄では思うように使えないという声が多く聞かれます。
この記事では、WiMAXが地下鉄で繋がりにくい理由を技術的な観点からわかりやすく解説し、少しでも快適に使うための具体的な対処法を紹介します。
読み終わるころには、地下鉄でのWiMAX利用について正しい知識が身につき、自分に合った通信環境の選び方がわかるようになります。
WiMAXが地下鉄で繋がらない理由
まずは、なぜWiMAXが地下鉄で繋がりにくいのか、その仕組みを理解しましょう。
WiMAXが使う電波の特性
WiMAXは主に2.5GHz帯と呼ばれる周波数の電波を使用しています。この周波数帯には「高速通信に適している」というメリットがある一方、「障害物に弱い」という特性があります。
電波は周波数が高いほど直進性が強くなり、壁やコンクリートなどの障害物を通り抜けにくくなります。2.5GHz帯はスマートフォンで使われる700〜900MHz帯(プラチナバンド)と比較すると、建物の奥や地下への浸透力が弱いのです。
プラチナバンドとは、700〜900MHz帯の電波のこと。障害物を回り込んで届きやすい特性があり、地下や建物の奥でも繋がりやすいとされています。
地下鉄の構造と電波遮断の仕組み
地下鉄は地中深くを走行しており、トンネルはコンクリートや土に囲まれています。地上の基地局から発信された電波は、この厚い障壁によって遮断されてしまいます。
地下鉄で携帯電話やモバイル通信を使えるようにするためには、トンネル内や駅構内に専用の基地局やアンテナを設置する必要があります。この設備投資には莫大なコストがかかるため、すべての地下鉄路線で対応が完了しているわけではありません。
駅構内と走行中で状況が異なる理由
地下鉄でのWiMAX接続状況は、駅のホームにいるときと電車が走行中のときで大きく異なります。
| 場所 | WiMAXの接続状況 |
|---|---|
| 駅ホーム | 基地局が設置されている駅では繋がることがある |
| 走行中(トンネル内) | ほとんどの区間で繋がらない |
| 地上区間 | 通常どおり繋がる |
駅ホームでは、通信事業者が設置した基地局の電波が届く場合があります。しかし、WiMAX用の基地局が設置されている駅は限られています。
走行中のトンネル内については、WiMAX専用の設備が整備されている区間はほとんどありません。そのため、トンネル内では基本的に繋がらないと考えておくのが現実的です。
地下鉄でWiMAXが使える場所・使えない場所
具体的にどこで繋がり、どこで繋がらないのかを見ていきましょう。
駅ホームでの接続状況
大都市圏の主要な地下鉄駅では、携帯電話各社の基地局が設置されています。ただし、WiMAXを提供するUQコミュニケーションズの基地局がすべての駅に設置されているわけではありません。
WiMAXが駅ホームで繋がるかどうかは、その駅にWiMAX用の基地局があるかどうかによります。公式サイトのエリアマップで確認できますが、駅単位での詳細な情報は掲載されていないことが多いです。
実際に繋がるかどうかは、その場で試してみるのが確実です。契約前に確認したい場合は、UQ WiMAXの「Try WiMAX」(15日間無料お試し)を利用する方法があります。
走行中のトンネル内での接続状況
結論から言うと、地下鉄の走行中(トンネル内)ではWiMAXはほぼ繋がりません。
これはWiMAXの技術的な問題というよりも、トンネル内にWiMAX用の設備が整備されていないことが原因です。大手携帯キャリアはトンネル内でも通信できるよう設備投資を進めていますが、WiMAXについては同様の整備が進んでいません。
主要都市の地下鉄路線別の対応状況
地下鉄での携帯電話・モバイル通信の対応状況は、路線や区間によって異なります。
| 都市・路線 | 携帯電話の対応状況(参考) |
|---|---|
| 東京メトロ全線 | 駅構内・トンネル内ともに大手キャリアは対応済み |
| 都営地下鉄全線 | 駅構内・トンネル内ともに大手キャリアは対応済み |
| 大阪メトロ全線 | 駅構内・トンネル内ともに大手キャリアは対応済み |
| 名古屋市営地下鉄 | 駅構内・トンネル内ともに大手キャリアは対応済み |
| 福岡市地下鉄 | 駅構内・トンネル内ともに大手キャリアは対応済み |
上記は大手携帯キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)の対応状況です。WiMAXについては、各社が整備した設備を利用できるかどうかが別の問題となります。
大手キャリアの電波が繋がる場所でも、WiMAXが繋がるとは限りません。WiMAXは独自の周波数帯を使用しているため、別途の設備整備が必要です。
地下鉄でWiMAXを使うための5つの対処法
WiMAXが地下鉄で繋がりにくいのは事実ですが、工夫次第で不便さを軽減できます。
事前にコンテンツをダウンロードしておく
もっとも確実な対処法は、地下鉄に乗る前に必要なコンテンツをダウンロードしておくことです。
・動画配信サービス(Netflix、Amazon Prime Video、YouTubeなど)のオフライン再生機能 ・音楽配信サービス(Spotify、Apple Musicなど)のダウンロード機能 ・電子書籍やマンガアプリのダウンロード機能 ・ニュースアプリの事前読み込み機能 ・地図アプリのオフラインマップ
自宅やオフィスなどWiMAXが安定して繋がる場所で、通勤・通学前にダウンロードしておく習慣をつけると、地下鉄での時間を有効活用できます。
駅に停車中に集中して通信する
駅のホームではWiMAXが繋がる可能性があります。電車が駅に停車している間に、メールの送受信やSNSの更新など、必要な通信を済ませる方法です。
ただし、停車時間は通常1〜2分程度と短いため、大容量のデータ通信には向きません。テキストベースの軽い通信に絞って使うのがコツです。
地下鉄Wi-Fiサービスを併用する
多くの地下鉄では、無料または有料のWi-Fiサービスが提供されています。
| サービス名 | 提供エリア・特徴 |
|---|---|
| Metro_Free_Wi-Fi | 東京メトロの駅構内で利用可能。無料、1回30分×5回/日 |
| Toei_Subway_Free_Wi-Fi | 都営地下鉄の駅構内で利用可能。無料、1回180分 |
| Osaka_Free_Wi-Fi | 大阪メトロの駅構内で利用可能。無料、1回30分 |
| docomo Wi-Fi / au Wi-Fi / ソフトバンクWi-Fi | 各キャリア契約者向け。駅構内で利用可能 |
これらのWi-Fiサービスは駅構内での利用が基本ですが、WiMAXが繋がらないときの補助として活用できます。
公衆Wi-Fiを利用する際は、セキュリティに注意が必要です。VPNを使用する、重要な情報の入力を避けるなどの対策をおすすめします。
スマホのモバイル回線に切り替える
WiMAXとは別に、スマートフォンの契約でモバイル回線を持っている場合は、地下鉄ではそちらに切り替える方法があります。
大手キャリアのモバイル回線は、地下鉄のトンネル内でも繋がるよう整備が進んでいます。スマホでそのまま通信するか、テザリング機能を使ってパソコンやタブレットを接続することも可能です。
ただし、スマホのデータ容量を消費するため、契約プランによっては追加料金が発生する可能性があります。
ハイスピードプラスエリアモードを試す
WiMAXには「ハイスピードプラスエリアモード」という機能があります。これは、WiMAX回線に加えてauの4G LTE回線も利用できるモードです。
ハイスピードプラスエリアモードとは、WiMAXの端末でauの4G LTE回線を使えるようにするオプション機能。通常のWiMAX回線よりも対応エリアが広く、地下や建物内でも繋がりやすくなります。
auの4G LTE回線は地下鉄でも対応している区間が多いため、このモードに切り替えることで繋がる可能性があります。
ただし、注意点があります。
・月間データ容量に制限がある(プランにより7GB〜30GB程度) ・制限を超えると速度制限がかかる場合がある ・追加料金が発生するプランもある(プランにより無料または月額1,100円程度) ・端末の設定変更が必要
地下鉄での利用頻度が高い場合は、このモードを常用するとデータ容量を使い切ってしまう可能性があるため、計画的に使うことが大切です。
WiMAXと他の通信サービスの地下鉄対応を比較
WiMAX以外の通信サービスは地下鉄でどの程度使えるのでしょうか。比較してみましょう。
大手キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)
大手3キャリアは、主要都市の地下鉄において駅構内・トンネル内ともに通信できるよう設備整備を進めてきました。
2020年代に入り、東京・大阪・名古屋・福岡などの主要都市では、ほぼ全線で携帯電話が利用可能になっています。走行中のトンネル内でも途切れることなく通信できる区間が増えています。
出典:一般社団法人電気通信事業者協会「地下鉄・トンネルでの携帯電話サービス」
| キャリア | 地下鉄での接続状況 |
|---|---|
| ドコモ | 主要都市の地下鉄はほぼ全線対応。トンネル内も通信可能 |
| au | 主要都市の地下鉄はほぼ全線対応。トンネル内も通信可能 |
| ソフトバンク | 主要都市の地下鉄はほぼ全線対応。トンネル内も通信可能 |
楽天モバイル
楽天モバイルは後発のキャリアであり、地下鉄でのエリア整備は大手3社に比べると遅れています。
ただし、楽天モバイルはauとのローミング協定(パートナー回線)を結んでおり、楽天回線が届かない場所ではau回線を利用できます。そのため、地下鉄でもau回線経由で繋がる可能性があります。
2024年以降、楽天モバイルは自社回線のエリア拡大を進めており、地下鉄での対応状況も徐々に改善されています。
クラウドSIM系ポケットWiFi
クラウドSIM型のポケットWiFi(Mugen WiFi、THE WiFiなど)は、ドコモ・au・ソフトバンクの回線を利用しています。
そのため、大手キャリアの電波が届く場所であれば繋がる可能性があります。地下鉄での接続状況は、WiMAXよりも良好なケースが多いです。
地下鉄での利用を重視するなら、WiMAXよりもクラウドSIM型や大手キャリアの回線を使ったサービスのほうが適しています。ただし、通信速度や月間データ容量など、他の条件も含めて総合的に判断することが大切です。
地下鉄利用が多い人はWiMAXを選ぶべきか
ここまでの内容を踏まえて、WiMAXがあなたに合っているかどうかを考えてみましょう。
WiMAXが向いている人の特徴
地下鉄での利用が限定的であれば、WiMAXは十分に選択肢になります。
・自宅や職場など地上での利用がメイン ・地下鉄に乗る時間が1日30分以下 ・地下鉄ではオフラインコンテンツで過ごせる ・高速通信や大容量データ通信を重視する ・工事不要ですぐに使いたい
WiMAXは地上では安定した高速通信が可能であり、データ容量の制限も緩やかです。地下鉄での不便さを許容できるなら、コストパフォーマンスの高い選択肢です。
WiMAXが向いていない人の特徴
一方、地下鉄での通信を重視する人にはWiMAXは向いていません。
・通勤・通学で地下鉄を1時間以上利用する ・地下鉄でリアルタイムの通信(メール、チャット、Web会議など)が必要 ・オフラインコンテンツの事前準備が面倒 ・地下街や建物の地下階での利用が多い
このような人は、大手キャリアの回線を使ったサービスや、クラウドSIM型のポケットWiFiを検討したほうがストレスなく使えます。
乗り換えを検討すべきケース
すでにWiMAXを契約していて地下鉄で不便を感じている場合、乗り換えを検討する価値があるのは以下のようなケースです。
| 状況 | 検討すべき対応 |
|---|---|
| 契約更新月が近い | 違約金なしで乗り換えられるタイミング。他サービスを比較検討 |
| 生活環境が変わった | 転勤や転居で地下鉄利用が増えた場合は見直しの好機 |
| スマホの大容量プランを契約している | テザリングで代用できるならポケットWiFi自体が不要かも |
| 自宅に光回線がある | 外出時のみの利用なら、より安いサービスで十分な可能性 |
乗り換えを検討する際は、違約金や端末残債の有無を確認してください。解約にかかるコストと、乗り換え後に得られるメリットを比較して判断しましょう。
よくある質問(FAQ)
A. 完全に使えないわけではありません。駅のホームでは繋がることがあります。ただし、走行中のトンネル内ではほぼ繋がらないと考えてください。
A. 技術的には可能ですが、トンネル内への設備投資が必要です。現時点では大規模な整備計画は発表されていません。
A. auの4G LTE回線を使うため、auが対応している地下鉄区間では繋がる可能性があります。ただし、月間データ容量に制限があるため、使いすぎに注意が必要です。
A. 地下鉄での利用を重視するなら、ドコモ・au・ソフトバンクの回線を使ったクラウドSIM型のサービスや、各キャリアのモバイルルーターが選択肢になります。
A. 公衆Wi-Fiにはセキュリティリスクがあります。VPNを使用する、重要な情報の入力を避けるなどの対策をおすすめします。
まとめ
WiMAXが地下鉄で繋がりにくい理由と対処法について解説しました。
・WiMAXは2.5GHz帯の電波を使用しており、地下への浸透力が弱い
・地下鉄のトンネル内にはWiMAX用の設備がほとんど整備されていない
・駅ホームでは繋がることがあるが、走行中はほぼ繋がらない
・対処法として、事前ダウンロード・地下鉄Wi-Fi併用・ハイスピードプラスエリアモードなどがある
・地下鉄利用が多い人は、大手キャリア回線を使ったサービスのほうが適している
地下鉄での通信環境を重視するかどうかで、最適なサービスは変わります。自分の利用シーンを振り返り、WiMAXを使い続けるか、他のサービスに乗り換えるかを検討してみてください。
まずは、自分が普段使う地下鉄路線でWiMAXがどの程度繋がるか、実際に試してみることをおすすめします。





















