「カタカタカタ…」「ガチャガチャ…」
オフィスや自宅で響くキーボードの打鍵音、気になっていませんか？在宅ワークが増えた今、「家族に音がうるさいと言われた」「オフィスで同僚の視線が気になる」「Web会議中にタイピング音がマイクに入ってしまう」といった悩みを抱える方が急増しています。
特にメカニカルキーボードは打鍵感が良い反面、音が大きくなりがちです。かといって、せっかく気に入っているキーボードを手放すのはもったいないですよね。
実は、キーボードの打鍵音は適切な対策を施すことで、5〜15dB程度軽減できることが多いです。これは体感として「かなり静かになった」と実感できるレベルの改善です。
この記事では、費用0円で今すぐ試せる方法から、グッズを活用した本格的な静音化、さらには根本解決となる静音キーボードの選び方まで、打鍵音対策を網羅的に解説します。あなたの状況に合った最適な対策がきっと見つかるはずです。
キーボードの打鍵音がうるさい原因を理解しよう
効果的な対策を選ぶためには、まず打鍵音が発生する仕組みを理解することが重要です。原因を知ることで、的確な対策を選べるようになります。
キーボードの種類別｜音が出る仕組みの違い
キーボードは大きく3種類に分かれ、それぞれ音が出る仕組みが異なります。
| キーボードの種類 | 打鍵音の特徴と原因 |
|---|---|
| メカニカルキーボード | スイッチ機構（軸）の動作音、底打ち音、キーキャップの反響音が重なり最も音が大きい。青軸は特に音が大きく、赤軸・茶軸は比較的静か |
| メンブレンキーボード | ゴムドームが押されて戻る音、底打ち時のプラスチック同士の衝突音。比較的静かだが、安価な製品は音が大きいことも |
| パンタグラフキーボード | ノートPCに多い薄型タイプ。ストロークが浅いため底打ち音が小さく、最も静か |
打鍵音は主に「スイッチの動作音」「底打ち音（キーが最後まで押し込まれた時の衝撃音）」「キーが戻る時の音」の3要素で構成されています。対策を考える際は、どの音を軽減したいのかを意識すると効果的です。
打鍵音の大きさは何dB？騒音レベルの目安
打鍵音の大きさを客観的に理解するために、騒音レベル（デシベル）で見てみましょう。
| 音の種類 | 騒音レベル（dB） |
|---|---|
| メカニカルキーボード（青軸） | 約60〜70dB |
| メカニカルキーボード（赤軸） | 約50〜60dB |
| メンブレンキーボード | 約40〜50dB |
| 静音キーボード | 約30〜40dB |
| 一般的なオフィスの環境音 | 約50dB |
| 図書館の静けさ | 約40dB |
環境省の基準によると、一般的なオフィス環境では50dB程度が目安とされています。青軸のメカニカルキーボードが60〜70dBということは、周囲より10〜20dB大きい音を出していることになり、これが「うるさい」と感じられる原因です。
「うるさい」と感じやすい音の特徴
同じ音量でも、「うるさい」と感じやすい音とそうでない音があります。
・高音域の「カチカチ」という金属的な音
・突発的で予測できない音
・反復する規則的な音（タイピングのリズム）
・残響が長い音
メカニカルキーボードの青軸が特に気になりやすいのは、スイッチ内部の「クリック感」を出すための機構が高音域の「カチッ」という音を発生させるためです。一方、同じメカニカルでも赤軸や静音軸はこの機構がないため、比較的不快感が少ないとされています。
【費用0円】今すぐできる打鍵音対策5選
まずはお金をかけずに今すぐ試せる対策から始めましょう。これらだけでも体感で分かる程度の効果が得られることがあります。
タイピング方法を見直す
打鍵音の大部分は「底打ち」、つまりキーを最後まで強く押し込むことで発生します。タイピング方法を見直すだけで、音を大幅に軽減できる可能性があります。
【静かなタイピングのコツ】
・キーを押し込みすぎない（底に当たる手前で指を止める意識）
・指を高く上げすぎない（振り下ろす勢いが強くなる）
・手首をデスクに固定しすぎない（力が入りやすくなる）
・力を抜いてリラックスしてタイピングする
特にメカニカルキーボードは、キーを完全に押し込まなくても入力が認識される「アクチュエーションポイント」が浅い位置にあります。底打ちは実は不要な動作なのです。
タイピング方法の改善は習慣化するまで意識が必要です。最初は入力ミスが増えることもありますが、慣れれば疲労軽減にもつながります。
キーボードの下にタオルや布を敷く
キーボードとデスクの間にタオルや布を敷くだけで、振動の伝達を抑え、音が軽減されます。
・厚手のタオルやフェイスタオルを折りたたんで敷く
・マウスパッドの大きいサイズ（デスクマット）を流用
・フェルト生地や吸音材の端切れも効果的
・キーボードが安定する厚さに調整する
この方法は底打ち音の軽減に効果があり、約3〜5dB程度の静音効果が期待できます。
キーボードの角度を調整する
キーボードの角度（チルト）を調整することで、タイピング時の力の入り方が変わり、打鍵音が軽減されることがあります。
・キーボード裏のスタンド（チルトスタンド）を立てている場合は倒してフラットにする
・逆に、フラットの状態で音が大きい場合はスタンドを立てる
・自分の姿勢と手首の角度が自然になる位置を探す
一般的には、キーボードをフラットに近い状態にした方が底打ちの衝撃が分散され、音が小さくなる傾向があります。
デスクマットの活用
すでにデスクマットをお持ちであれば、キーボードの下に敷くことで振動を吸収できます。
デスクマットの素材によって吸音効果が異なります。コルク、フェルト、ウレタン素材のマットは吸音性が高く、PVCやレザー調のマットは効果が限定的です。
キーボードの設置場所を変える
デスクの材質や構造によって、打鍵音の響き方が大きく変わります。
・ガラス天板やスチールデスクは音が反響しやすい
・木製デスクは比較的音を吸収する
・デスクの端より中央付近の方が振動が伝わりにくいことも
・キーボードトレイ（引き出し式）があれば活用する
【1,000円〜】グッズを使った打鍵音対策6選
費用0円の対策で効果が不十分な場合は、専用グッズを使った本格的な静音化を検討しましょう。いずれも比較的安価で、大きな効果が期待できます。
静音リング（Oリング）を取り付ける
最も手軽で効果が高い静音化グッズが「静音リング」です。Oリングとも呼ばれ、キーキャップの裏側に取り付けることで底打ち音を軽減します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 価格帯 | 500〜1,500円程度（100〜200個入り） |
| 効果 | 底打ち音を約5〜10dB軽減 |
| メリット | 安価、取り付け簡単、元に戻せる |
| デメリット | ストロークが浅くなる、打鍵感が変わる |
【静音リングの取り付け手順】
1. キーキャップを外す（キーキャッププラーがあると便利）
2. キーキャップの裏側の十字軸（ステム）部分にリングを装着
3. リングがしっかりはまっていることを確認
4. キーキャップを元に戻す
5. すべてのキーに同様の作業を行う
静音リングには厚さの種類があります。厚いもの（2mm程度）ほど静音効果は高くなりますが、その分ストロークが浅くなります。最初は薄めのもの（1.5mm）から試すことをおすすめします。
キーボード用吸音マットを使う
キーボード専用に設計された吸音マットは、一般的なデスクマットより高い静音効果が期待できます。
・価格帯：2,000〜5,000円程度
・素材はウレタンフォームやネオプレンが多い
・キーボードのサイズに合わせたカット済み製品もある
・底打ち音と振動の両方を吸収
静音キーキャップに交換する
キーキャップの素材を変更することで、打鍵音の質を変えることができます。
| 素材 | 特徴 |
|---|---|
| ABS（標準的） | 軽量で高音が響きやすい、経年で摩耗する |
| PBT | 重量があり低音寄りの音、摩耗に強い |
| シリコン/ゴム製 | 非常に静かだが打鍵感が大きく変わる |
PBT製のキーキャップは、ABS製より「コトコト」という落ち着いた音質になる傾向があり、不快感が軽減されることがあります。
ルブ（潤滑剤）を塗布する
キーボードのスイッチ部分に潤滑剤（ルブ）を塗布することで、金属やプラスチックの摩擦音を軽減できます。
・価格帯：1,000〜3,000円程度（潤滑剤のみ）
・効果：スプリング音、スイッチの擦れ音を軽減
・作業時間：全キーに塗布すると2〜4時間程度
・難易度：中級者向け（スイッチの分解が必要な場合あり）
ルブの塗布は元に戻せない作業です。また、塗りすぎると打鍵感が悪化することもあります。最初は目立たないキー（右上のPause/Breakキーなど）で試してから、全体に施工することをおすすめします。
フォームを詰める（フォームMOD）
キーボードの内部にフォーム（スポンジや吸音材）を詰める「フォームMOD」は、本格的な静音化方法として知られています。
【フォームMODの効果】
・ケース内の反響音を大幅に軽減
・底打ち音の共鳴を抑制
・高音域のキンキンした音を低減
・約5〜10dBの静音効果が期待できる
キーボードを分解してフォームを敷き詰めるため、保証が無効になる可能性があります。また、作業難易度は高めです。
スタビライザーを改善する
スペースキーやエンターキーなど、大きいキーには「スタビライザー」という安定機構が付いています。このスタビライザーが発するカチャカチャ音は意外と目立つため、改善することで全体の打鍵音を軽減できます。
・スタビライザーにルブを塗布する
・バンドエイドMOD（接触部分にテープを貼る）
・スタビライザー用のフォームパッドを貼る
【根本解決】静音キーボードへの買い替え
対策を施しても満足できない場合や、最初から静かな環境を求める場合は、静音キーボードへの買い替えが根本的な解決策になります。
静音キーボードの選び方3つのポイント
【ポイント1：スイッチの種類を確認】
・静音赤軸（Silent Red）：リニア軸の静音版、最も静か
・静音茶軸：タクタイル軸の静音版、適度なクリック感
・メンブレン静音タイプ：価格を抑えたい場合
【ポイント2：構造による静音設計】
・内部に吸音材が入っているか
・ケース素材（プラスチックより金属の方が反響しにくい傾向）
・ガスケットマウント構造（打鍵音を吸収しやすい）
【ポイント3：実際の音量スペック】
・製品によっては打鍵音のdB値を公表している
・YouTubeなどで実際の打鍵音を確認する
キーボードタイプ別おすすめの選択肢
| 重視するポイント | おすすめの選択肢 |
|---|---|
| とにかく静かさ重視 | 静音赤軸搭載のメカニカル、または高品質メンブレン |
| 打鍵感と静かさの両立 | 静音茶軸、または静音スイッチ搭載のカスタムキーボード |
| コスト重視 | メンブレン静音タイプ、パンタグラフタイプ |
| ゲーミング用途 | 静音スイッチ搭載のゲーミングキーボード |
【シーン別】打鍵音対策の優先順位
置かれている状況によって、最適な対策は異なります。あなたのシーンに合った対策を優先して実施しましょう。
オフィスで周囲に迷惑をかけたくない場合
【優先度高】
1. タイピング方法の改善（0円、即効性あり）
2. 静音リングの取り付け（低コストで高効果）
3. デスクマットの活用（振動軽減）
【検討事項】
・会社の備品キーボードの場合、改造は難しいため静音キーボードの持ち込み許可を確認
・周囲のノイズレベルも考慮（元々うるさいオフィスなら対策の優先度は下がる）
在宅ワークで家族への配慮が必要な場合
【優先度高】
1. 作業部屋のドアを閉める（基本的な対策）
2. キーボード下に吸音マットを敷く
3. 静音リング＋フォームMODの組み合わせ
4. 静音キーボードへの買い替え
【検討事項】
・深夜作業が多い場合は根本解決（静音キーボード）を検討
・子どもの昼寝時間帯など、特に静かにしたい時間帯を把握
Web会議中のタイピング音対策
Web会議中にタイピング音がマイクに入る問題は、キーボードの静音化だけでなく、マイク設定も重要です。
【キーボード側の対策】
・上記の静音化対策を実施
・キーボードをマイクからできるだけ離す
・指向性マイク（単一指向性）を使用し、キーボードの方向からの音を拾いにくくする
【ソフトウェア側の対策】
・Zoomの「背景雑音の抑制」機能を「高」に設定
・Teamsの「ノイズ抑制」を有効にする
・NVIDIA Broadcast（RTXグラフィックカード搭載PC）でノイズ除去
・Krisp等のノイズキャンセリングソフトを使用
多くのWeb会議ツールには、AIによるノイズ抑制機能が標準搭載されています。まずはこの機能を有効にすることで、タイピング音の問題が解決するケースも多いです。
よくある誤解と注意点
打鍵音対策について、いくつかの誤解があります。
【誤解1】高いキーボードは静か
→ 実際は価格と静音性に相関はありません。むしろ高級メカニカルキーボードは打鍵感を重視して音が大きいものも多いです。静音性を求めるなら「静音スイッチ搭載」を明記している製品を選びましょう。
【誤解2】メンブレンキーボードなら静か
→ 確かにメカニカルより静かな傾向はありますが、安価なメンブレンキーボードはプラスチックの反響音が大きく、思ったより音がすることがあります。
【誤解3】静音リングを付けると打鍵感が悪くなる
→ 打鍵感は確かに変わりますが、「悪くなる」とは限りません。底打ちの衝撃が軽減されることで、むしろ指への負担が減り快適になるという声もあります。
よくある質問（FAQ）
Q：メカニカルキーボードの青軸を静かにする方法はありますか？
A：青軸はスイッチ内部のクリック機構が音の主な原因のため、完全に静かにすることは難しいです。静音リングで底打ち音は軽減できますが、クリック音自体は消せません。静音性を重視するなら、静音赤軸や静音茶軸への買い替えをおすすめします。
Q：静音リングは全部のキーに付けるべきですか？
A：基本的には全キーに付けることをおすすめします。一部だけに付けると、キーによって打鍵感や音が異なり、違和感を感じる場合があります。ただし、お試しとして最初は使用頻度の高いキーだけに付けて効果を確認するのも良いでしょう。
Q：ルブを塗る際のおすすめの潤滑剤は？
A：キーボード用として定番なのは「Krytox GPL 205g0」や「Tribosys 3204」です。初心者にはやや粘度の低い3204が塗りやすいとされています。絶対に使ってはいけないのは、プラスチックを溶かす成分が入った一般的な潤滑スプレーです。
Q：賃貸マンションで深夜にタイピングしても大丈夫でしょうか？
A：キーボードの打鍵音は主に空気を伝わる音なので、隣室への影響は比較的小さいです。ただし、デスクへの振動が床に伝わり、下の階に響く可能性はあります。デスクマットの使用と、タイピング方法の改善を組み合わせることで、ほとんどの場合問題ないレベルになります。
Q：静音キーボードに買い替えるなら、どの価格帯がおすすめですか？
A：静音性能を重視するなら、8,000〜15,000円程度の価格帯がバランスが良いです。この価格帯であれば、静音スイッチ搭載で内部に吸音材が入った製品が選べます。3,000円以下の製品は静音を謳っていても効果が限定的な場合があります。
まとめ
キーボードの打鍵音がうるさい問題は、適切な対策を施すことで確実に改善できます。
【費用0円でできる対策】
・タイピング方法の改善（底打ちしない）
・キーボード下に布やタオルを敷く
・キーボードの角度・設置場所を調整
【グッズを使った対策】
・静音リング（最もコスパが良い）
・吸音マット、フォームMOD
・ルブの塗布（中級者向け）
【根本解決】
・静音スイッチ搭載のキーボードに買い替え
まずは費用0円の対策から試し、効果が不十分であれば静音リングを検討してみてください。それでも満足できない場合や、最初から確実な静音性を求める場合は、静音キーボードへの買い替えが最適解となります。
あなたの状況に合った対策で、快適な作業環境を実現してください。
打鍵音の感じ方は個人差があります。この記事で紹介した対策の効果も、使用しているキーボードの種類やデスク環境によって異なります。まずは費用のかからない方法から試し、必要に応じてグッズの購入や買い替えを検討してください。
