「友達と映画鑑賞会をしようとしたら、映像は映るのに音だけが出ない…」
「ゲーム配信を始めたけど、BGMや効果音が相手に全く聞こえていない…」
Discordの「Go Live(画面共有)」機能は、ゲーマーやコミュニティにとって欠かせないツールです。しかし、「自分には聞こえているのに、相手には無音」というトラブルは、2025年現在でも最も頻繁に発生する悩みの一つです。
実はこれ、Discordの不具合であることは稀です。大半の原因は、「Windowsの音声キャプチャ仕様の誤解」や「ブラウザの著作権保護機能(DRM)」、あるいは「Discordの設定ミス」にあります。
この記事では、初心者が見落としがちな初歩的なミスから、レジストリやドライバーに関わる高度な設定まで、「音が出ない」現象を完全に解決するための全手順を網羅しました。ネット上の古い情報に惑わされず、最新のDiscord仕様に基づいた正しい設定を行いましょう。
この記事のゴール
- 「画面全体」と「アプリ共有」の決定的な違いを理解する
- NetflixやYouTube、Amazonプライムビデオの音声を確実に流す
- ApexやValorantなどのゲーム音声をクリアに届ける
- Macユーザー特有の「音声ドライバー」問題を解決する
【基本編】まずはここから!初心者が陥る3つの罠
設定をいじり回す前に、まずは「灯台下暗し」な原因を排除しましょう。これらはDiscordの仕様を知らないと誰でもやってしまうミスです。
1. 「画面(Screens)」を共有していませんか?
これが原因の約8割を占めます。
Discordで画面共有ボタン(モニターに矢印のアイコン)を押すと、共有範囲を選択するウィンドウが出ます。ここで「画面(Screens)」タブを選んでいませんか?
重要:画面全体共有では音が出ません
「画面1」などのデスクトップ全体を共有するモードでは、Windowsの仕様上、PCのシステム音声は共有されません。(※一部の環境やNitro加入者を除く場合もありますが、基本的にはマイク音声のみになります)
解決策:
必ず「アプリ(Applications)」タブを選択してください。そして、音を流したいウィンドウ(Chrome、ゲーム画面、メディアプレイヤーなど)を個別に指定します。これで初めて、Discordの音声フック機能(Audio Hook)が作動します。
2. 配信画面の「サウンド」がミュートになっていませんか?
意外と見落としがちなのが、視聴者側の設定です。
視聴している友人が、誤ってあなたの配信音声をミュートにしている可能性があります。配信画面を右クリックし、スピーカーアイコンの音量バーがゼロになっていないか確認してもらってください。
3. Discordアプリを「管理者権限」で実行していない
特にPCゲーム(Apex Legends, Valorant, Genshin Impactなど)を配信する場合に多い原因です。
最近のオンラインゲームは、チート対策のために高いセキュリティ権限(管理者権限)で動作しています。一方で、Discordが通常の権限で動いていると、「Discordがゲームの音声を盗み聞き(キャプチャ)しようとしても、Windowsにブロックされる」という現象が起きます。
解決策:
一度Discordを完全に終了(タスクトレイからも終了)し、デスクトップのDiscordアイコンを右クリック > 「管理者として実行」を選択してください。
【ブラウザ編】映画・動画鑑賞会で音が出ない・画面が真っ黒になる場合
YouTube、Netflix、Amazon Prime Video、Disney+などをChromeやEdgeで見ようとした時、「音が出ない」だけでなく「字幕だけ映って映像が真っ黒」になることがあります。
これはブラウザの「ハードウェアアクセラレーション」機能と、著作権保護技術(HDCP)が干渉しているためです。
Chrome / Edgeの設定変更(必須テクニック)
ブラウザの描画処理をGPUからCPUに切り替えることで、Discordが映像と音声をキャプチャできるようにします。
Google Chromeの場合
- Chrome右上の「︙(メニュー)」から「設定」を開く。
- 左メニューの「システム」をクリックする。
- 「グラフィック アクセラレーションが使用可能な場合は使用する」をOFF(灰色)にする。
- 表示される「再起動」ボタンを押してChromeを再起動する。
Microsoft Edgeの場合
- Edge右上の「…(メニュー)」から「設定」を開く。
- 左メニューの「システムとパフォーマンス」をクリックする。
- 「使用可能な場合はグラフィックス アクセラレータを使用する」をOFFにする。
- 「再起動」ボタンを押す。
注意点:
ハードウェアアクセラレーションをOFFにすると、ブラウザでの高画質動画再生や3D描画が少し重くなる場合があります。鑑賞会が終わったら、設定をONに戻すことをお勧めします。
【設定編】Discordの「音声設定」完全攻略
上記を試しても改善しない場合、Discordアプリ内部の音声処理エンジンが、お使いのPC環境と噛み合っていない可能性があります。
「ユーザー設定(歯車アイコン)」>「音声・ビデオ」を開き、以下の項目を順番に見直してください。
1. 「登録済みのゲーム」に手動追加する
Discordは、現在起動しているソフトを自動検知しますが、ブラウザやマイナーなフリーゲームは「ゲーム」として認識されないことがあります。認識されていないアプリは、音声キャプチャの優先度が下がります。
- ユーザー設定の左メニューから「登録済みのゲーム」を開く。
- 「ゲームが見つかりませんか?」の横にある「追加する!」をクリック。
- プルダウンメニューから、配信したいソフト(Chromeやゲーム名)を選択し、「ゲームを追加」を押す。
これでDiscordが強制的にそのソフトを監視対象とし、音声を拾いに行くようになります。
2. 「画面共有の音声キャプチャに試験的な方法を使用する」
「音声・ビデオ」設定を下にスクロールすると、「画面共有」というセクションがあります。
ここにある「画面共有の音声キャプチャに試験的な方法を使用する」というスイッチを切り替えてみてください。ONでダメならOFF、OFFならONにします。環境によってどちらが安定するかが異なります。
3. 「オーディオのサブシステム」を変更する
さらに下に行くと、「オーディオのサブシステム」という項目があります。通常は「Standard」になっていますが、ここを「Legacy(レガシー)」に変更してみてください。
これはDiscordが音声を取り扱う際の「エンジンの種類」です。古いPCや、特定のオーディオインターフェース(YAMAHA AG03など)を使用している場合、最新のStandardエンジンでは音が拾えないことがありますが、Legacyに戻すことで解決するケースが多々あります。
4. 音声設定のリセット
設定をいじりすぎて訳がわからなくなった場合は、「音声・ビデオ」設定の一番下にある「音声設定のリセット」を押し、初期状態に戻してから再設定すると直ることがあります。
参考リンク:Discord 公式サポート – 音声・ビデオトラブルシューティングガイド
【Windows編】出力デバイスとドライバーの問題
Discordの外側、つまりWindows自体のサウンド設定が原因であるケースも考えられます。
1. 再生デバイスの確認
自分(配信者)が聞いているデバイスと、Discordが音を拾おうとしているデバイスが一致している必要があります。
- タスクバー右下のスピーカーアイコンをクリックし、現在音が出ているデバイス名(例:Headphones (Realtek Audio))を確認します。
- Discordの「音声・ビデオ」設定の「出力デバイス」が、上記と同じものになっているか、または「Default」になっているか確認します。
もしUSBヘッドセットを使っているのに、Discord側が「モニターのスピーカー」などを指定していると、音は乗らないか、マイクから漏れた音だけが相手に届くことになります。
2. NahimicやSonic Studioなどの音響ソフト
MSIやASUSなどのゲーミングPCには、音質を良くするための常駐ソフト(Nahimic, Sonic Studio, Dolby Atmosなど)がプリインストールされています。
これらがDiscordの音声キャプチャと競合し、音が出なくなる事例が報告されています。タスクトレイからこれらのソフトを一時的に終了させるか、アンインストールして改善するか試してください。
【Mac編】macOS特有の「ACE」ドライバー問題
Macユーザーの場合、Windowsとは全く異なる事情があります。macOSはセキュリティが厳しく、標準状態ではアプリ内の音声を共有することを許可していません。
Rogue Amoeba製ドライバーのインストール
Mac版Discordで初めて「アプリ」の画面共有を行う際、「音声を共有するには追加のインストールが必要です」というポップアップが表示されたはずです。これは「ACE (Audio Capture Engine)」という特別なドライバーです。
これをインストールせずにスキップしてしまった場合、音は一生出ません。
- Discordを再起動し、画面共有を開始する。
- 上部に表示されるインストールバー、または「音声・ビデオ」設定内の「画面共有」セクションからインストールを実行する。
- Macのパスワードを入力し、インストール完了後にDiscordを再起動する。
【最終手段】キャッシュのクリアと再インストール
ここまで全ての項目(全10項目)を試しても解決しない場合、Discordの一時ファイル(キャッシュ)が破損している可能性があります。
単にアプリを削除して入れ直すだけでは、設定ファイルが残ってしまうため効果が薄いです。以下の手順で「完全削除」を行ってください。
完全クリーンインストールの手順(Windows)
- Discordを終了する。
- キーボードの
Windowsキー+Rを押す。 %appdata%と入力してEnter。- フォルダ一覧から「discord」フォルダを探し、右クリックして削除する。
- もう一度
Windowsキー+Rを押し、今度は%localappdata%と入力してEnter。 - 同様に「Discord」フォルダを削除する。
- PCを再起動する。
- Discord公式サイトからインストーラーをダウンロードし、再インストールする。
Q. スマホ(iPhone/Android)で画面共有すると音が出ません。
- A. スマホ版Discordの場合、OSの著作権保護制限が非常に厳しいです。YouTubeやTwitch、TikTokなどの一部アプリやゲーム音は共有できますが、Netflix、Amazonプライムビデオ、Huluなどの有料動画サービス(VOD)は、仕様上、映像も音声も共有できません(真っ黒・無音になります)。これを回避する方法はスマホ単体ではありません。
Q. 相手の声が自分の配信に乗ってしまい、ループ(エコー)します。
- A. あなたが「スピーカー」を使って音を聞いている場合、マイクがスピーカーから出た「相手の声」を拾ってしまい、それがまた配信に乗って相手に届く…という無限ループが発生しています。
配信をする際は、必ずイヤホンまたはヘッドホンを使用してください。また、Windowsのサウンド設定で「ステレオミキサー」が有効になっている場合もループの原因になるため、無効にしてください。 Q. 特定のゲーム(原神やApexなど)だけ音が出ません。
- A. 記事内でも触れましたが、それらのゲームは「管理者権限」で動作しています。Discordも必ず「管理者として実行」してください。また、ゲーム内のオーディオ設定で「バックグラウンド時の音声をミュート」という項目がある場合、Alt+Tabで画面を切り替えた瞬間に音が消えてしまうため、この設定をOFFにすることをお勧めします。
Discordの画面共有トラブルは、一つ一つ原因を潰していけば必ず解決します。まずは最も多い「アプリ共有」への切り替えと「ブラウザのハードウェアアクセラレーションOFF」から試してみてください。快適なシェアライフを!





















